ニュースの概要
スポーツデータ事業者のB1が、自社のSports Data Feedで扱う大会が3,000を超えたと発表した。対象は野球やサッカーなどの従来型競技にとどまらず、eスポーツやAIスポーツにまで及ぶ。配信内容は、試合前とライブを合わせて20万件超のイベント、それに紐づく賭けの種類(マーケット)、試合前の安定した価格、ライブ中の素早い更新である。つまり、大会数の多さだけでなく、価格の安定と更新の速さを前面に出した発表だ。賭け事業者にとっては、自前で情報を集めなくても幅広い商品を並べられる環境が整うことになり、利用者の選択肢と滞在時間を広げる材料になる。
引用元: B1のスポーツデータフィード、対象大会が3,000超に拡大(InterGame)
分析・見解
3,000大会という数字が示す、品ぞろえ競争の変質
これまでスポーツベッティングの品ぞろえは、主要リーグをどれだけ深く扱えるかで競われてきた。野球のNPBやMLB、サッカーの欧州リーグのように、注目度の高い試合に人もお金も集中していたのである。
ところが今回の発表は、競争の軸が「深さ」から「広さ」へ移りつつあることを示している。3,000の大会を同時に扱うということは、世界のどこかで常に何かの試合が動いている状態をつくるということだ。利用者が深夜や早朝にアプリを開いても、賭けられる試合が必ずある。この「空白時間をなくす」効果は、地味だが収益への影響が大きい。
eスポーツとAIスポーツを加える意味
eスポーツは、試合の進行がすべてデジタルで記録される。審判の判定や球場の状況を人が入力する必要がなく、データの欠損が起きにくい。この性質は、データ配信業者にとって都合がよい。従来競技より低いコストで、細かい統計を高速に出せるからだ。
AIスポーツは、さらに特徴的である。人工知能同士や、人工知能が運営する競技を指すと考えられる。試合の開催数を事業者側で調整しやすく、深夜でも開催できる。サッカーが週末に集中するのに対し、需要の谷間を埋める「商品」として設計できる点が新しい。
「安定した試合前価格」と「速いライブ更新」は別の技術課題
発表が強調する二つの要素は、実は求められる能力が違う。試合前の価格を安定させるには、多くの情報源から数値を集めて平均的な水準を保つ統計処理が要る。一方、ライブ更新の速さは、通信の遅れをどれだけ縮められるかの勝負になる。
後者が遅いと、事業者は大きな損失を抱える。たとえば得点が入った直後に、古い価格のまま賭けを受け付けてしまうからだ。賭け手の中には、わずかな遅れを突く者もいる。数秒の差が、そのまま損失額に直結する世界である。3,000大会すべてでこの速度を保てるかが、今後の信頼性を測る物差しになる。
日本の読者が見ておくべき視点
日本では賭けとしての展開は限られるが、同じデータ基盤は別の用途にも広がる。試合速報アプリ、ファンタジースポーツ、ニュースメディアの自動記事化などである。規制の有無にかかわらず、スポーツデータは放送、広告、ゲームの共通部品になりつつある。賭けという最も厳しい要求水準で鍛えられたデータが、他業界へ転用される流れは、決済や地図の技術が辿った道とよく似ている。
ビジネスへの影響
事業者は「何を自前で持たないか」を決める時期に来た
3,000大会規模のデータが外部から買える以上、自社で試合情報を集める意味は薄れた。判断すべきは、どの競技を差別化の核にし、どれを外部に任せるかである。たとえば自社は特定リーグの解説や独自の予想に集中し、残りの大会は配信業者のデータで埋める。この分担が、人件費を抑えつつ品ぞろえを増やす現実的な道だ。
ただし、一社に依存しすぎるのは危うい。障害が起きれば全商品が止まる。契約時には、遅延時の補償や複数業者の併用を条件に入れておきたい。
スポーツ関連企業が応用できる三つの使い道
賭けに関わらない企業にも示唆はある。第一に、メディアは試合結果とデータを組み合わせ、マイナー競技の記事を自動で量産できる。第二に、スポンサー企業は、露出が多い大会を細かい数値で比較し、広告費の配分を見直せる。第三に、アプリ開発者は、速報の速さを売りに利用者を囲い込める。
最初の一歩は、自社が扱う競技のデータ提供元を洗い出し、更新の遅れを実測することだ。数字で遅れを把握すれば、乗り換えや追加契約の交渉でも主導権を握れる。